リンパ腫

【論文解説】希望のCAR-T療法!TRANSCEND FL試験から見るブレヤンジの実力

1. はじめに

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
濾胞性リンパ腫(FL)の治療、本当にお疲れ様です。FLは再発することも少なくなく、何度も治療を繰り返す中で、「今度の治療はしっかり効いてくれるだろうか」「もっと良い治療法はないのかな」と、ご不安に感じていらっしゃる方も多いと思います。特に、治療が効きにくくなってきたと感じている方や、再発してしまった方は、なおさらですよね。ご家族の皆さんも、心配なお気持ちでいっぱいでしょう。

今回の解説は、そのような再発したり治療が効きにくくなったりした濾胞性リンパ腫(FL)の患者さんに対する新しい治療法、「CAR-T(カーティー)細胞療法」のひとつである リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、製品名: ブレヤンジ) の効果と安全性を詳しく調べた、TRANSCEND FL という臨床試験の論文 を参考にしています。

出典:Morschhauser F, Dahiya S, Palomba ML, et al. Lisocabtagene maraleucel in follicular lymphoma: the phase 2 TRANSCEND FL study. Nat Med. 2024 Aug;30(8):2199-2207.

このブレヤンジは、以前は主に悪性度の高いリンパ腫(DLBCL)に使われていましたが、濾胞性リンパ腫に対してもその効果が期待され、日本でも使えるようになりました(※2024年8月にFLに対する適応が追加承認されました)。今日は、このブレヤンジが再発・難治FLに対してどれくらいの効果を発揮し、安全性はどうなのか、詳しく見ていきましょう。皆さんの希望につながる情報となれば嬉しいです。

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濾胞性リンパ腫は、多くの場合ゆっくり進行しますが、再発を繰り返すうちに、だんだんとお薬が効きにくくなってしまうことがあります。特に、初回治療(免疫化学療法)の後、24ヶ月(2年)以内に再発・進行してしまう「POD24」や、抗CD20抗体薬(リツキシマブなど)とアルキル化剤(化学療法薬の一種)の両方に抵抗性を示す「ダブル リフラクトリー」といった状態になると、その後の治療が難しくなると言われています。

そこで大きな期待が寄せられているのが、患者さん自身の免疫細胞の力を利用してがんを攻撃する CAR-T細胞療法 です。

患者さん自身の血液から免疫細胞の一種であるT細胞を取り出し、遺伝子改変技術を使って、リンパ腫細胞の表面にある「CD19」という目印を認識して攻撃するように「教育」します。このパワーアップしたT細胞(CAR-T細胞)を体外でたくさん増やし、患者さんの体に戻す(点滴で輸注する)治療法です。体に戻されたCAR-T細胞がリンパ腫細胞を見つけ出して攻撃してくれる、という仕組みです。

基本的には 1回 の治療(輸注)で、がん細胞を強力に排除し、長期的な効果(寛解状態の維持) を目指します。治療前には、CAR-T細胞が働きやすいように、軽い化学療法(リンパ球除去化学療法)を行います。

今回のTRANSCEND FL試験は、このリソカブタゲン マラルユーセル(製品名:ブレヤンジ)が、再発・難治性の濾胞性リンパ腫に対して、本当に効果があるのか、そして安全に治療できるのかを確かめるために、世界中の多くの病院が協力して行われた臨床試験(第2相試験)です。

これまでに全身的な治療を受けたことがある、再発または難治性の濾胞性リンパ腫(グレード1~3a)の成人患者さん(130人)。

この試験の大きな特徴は、3回以上の治療歴がある方(3L+) だけでなく、2回目の治療(2L)だけれども、POD24などの「高リスク」な特徴を持つ方 も対象に含めて、CAR-T療法の効果と安全性を評価した、初めての研究であるという点です。これまで治療選択肢が特に限られていた、より早い段階(2ライン目)の高リスク患者さんへの効果が注目されました。

    • 効性: 治療によってリンパ腫がどれだけ小さくなったか(奏効率ORR)、完全に見えなくなったか(完全寛解率CR率)、その効果がどれくらい続いたか(奏効期間DOR)、病気が進行せずにいられた期間(無増悪生存期間PFS)、長生きできたか(全生存期間OS)。
    • 安全性: CAR-T療法で特に注意が必要な副作用(サイトカイン放出症候群CRS、神経系の副作用NE)や、感染症、血球減少などがどれくらい起こったか。
    • QOL(生活の質): 患者さん自身が、治療後に体調や日常生活の質をどう感じているか(患者報告アウトカムPRO)。

    試験の結果、リソカブタゲン マラルユーセル(製品名:ブレヤンジ)は、再発・難治性の濾胞性リンパ腫に対して、非常に高い効果と、管理可能な安全性を示すことが分かりました!

    まず、治療効果が非常に高かったことが報告されました。

    3回以上の治療歴がある方(3L+)では、97%もの方に治療効果(ORR)が見られ、そのうち なんと94% が完全寛解(CR)という、がん細胞が検出できないくらい非常に深い効果を達成しました! さらに注目すべきは、2回目の治療となる高リスクの方(2L)でも、96% に効果が見られ、しかも効果があった方全員がCRを達成したのです! これは本当に目覚ましい結果で、治療が難しいとされてきた患者さんにとって大きな希望となりますね!

    治療効果は一時的なものではなく、長続きする可能性も示されました。

    • 治療開始から1年経った時点でも、病気が進行せずに元気に過ごせていた方の割合(12ヶ月PFS率)は、3L+群で81%、2L群で91%と非常に高かったです。
    • 効果の持続期間(DOR)やPFSの中央値(半数の方が効果を維持したり、進行せずにいられたりする期間)は、どちらのグループもまだ計算できないほど長い(未到達)という結果でした。

    初回治療後すぐに再発した(POD24)方や、複数の薬剤に抵抗性(ダブル リフラクトリー)の方など、これまで治療が難しいとされてきた高リスクの特徴を持つ患者さんでも、一貫して高い効果が見られました。

    CAR-T療法では、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経系の副作用(NE)が心配されますよね。この試験ではどうだったかというと…

    • NE: 神経系の副作用も15%の方で見られましたが、こちらも重症(Grade 3以上)は2%と稀でした。 他のCAR-T療法薬と比較して、重いCRSやNEのリスクが低い可能性がある、という点はブレヤンジの特徴の一つかもしれません。
    • CRS: 半数以上(58%)の方で発生しましたが、そのほとんどは発熱などの軽い症状(Grade 1)でした。入院や集中治療が必要になるような重症(Grade 3以上)になったのは、たった1人(1%)だけでした。

    一方で、CAR-T療法後は免疫力が低下するため、感染症には注意が必要です。入院が必要になるような重い感染症(Grade 3以上)は、治療後90日以内に5%の方で見られました。また、治療後に白血球や血小板などが一時的に減少し、それが長引くこと(長期血球減少)もありましたが、多くの方は時間とともに回復していました。

    この試験では、一部の患者さんが外来でブレヤンジの投与やその後の経過観察を受けており、大きな問題は報告されませんでした。将来的には、より多くの患者さんが入院期間を短縮したり、外来中心で治療を受けたりできるようになるかもしれませんね。(※ただし、現時点ではCAR-T療法は原則として入院管理が必要です)

    患者さん自身による体調や生活の質の評価(PRO)も、治療後早い段階(約1ヶ月後)から改善が見られ、それが維持される傾向がありました。だるさや痛みが和らいだ、と感じた方が多かったようです。

    リソカブタゲン マラルユーセル(製品名:ブレヤンジ)による治療を受ける上で、特に注意しておきたい点をまとめます。

    • CRS(サイトカイン放出症候群): 発生頻度は比較的高いですが、重症化は稀です。それでも、発熱、悪寒、倦怠感、頭痛、血圧低下、呼吸困難などの初期症状に注意し、早期に発見して適切な対応(解熱剤、水分補給、場合によってはトシリズマブ(製品名:アクテムラ)やステロイドの使用)を行うことが非常に重要です。
    • NE(神経系イベント): 頻度は高くありませんが、起こる可能性があります。言葉が出にくくなる(失語症)、字が書きにくくなる、計算ができなくなる、意識がもうろうとする、けいれんなどの症状に注意が必要です。CRSと同様に早期発見・早期対応が大切です。
    • 感染症: 治療後しばらくは免疫力が低下し、様々な感染症にかかりやすくなります。予防的な抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬の使用や、免疫グロブリン(ガンマグロブリン製剤)の補充など、徹底した感染予防と管理が必要です。
    • 血球減少: 好中球、血小板、赤血球などが減少し、それが長引くことがあります。必要に応じてG-CSF製剤(白血球を増やす注射)や輸血を行います。

    CAR-T療法は、

    という特別なプロセスが必要です。また、この治療を行えるのは、厳しい基準を満たした認定施設に限られています。

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      再発を繰り返した今回のTRANSCEND FL試験の結果は、再発したり治療が効きにくくなったりした濾胞性リンパ腫(FL)の患者さん、特にこれまで治療が難しかった高リスクの方や、2回目の治療となる方々にとって、CAR-T療法のひとつであるリソカブタゲン マラルユーセル(製品名:ブレヤンジ)が、非常に高い確率で完全寛解をもたらし、その効果も長く続く可能性がある、という大変心強い結果を示してくれました。

      心配されるCRSや神経系の副作用も、重症化するリスクは比較的低いという点も、患者さんにとっては大きな安心材料になるかもしれませんね。

      日本でも濾胞性リンパ腫に対してブレヤンジが使えるようになったことで、治療の選択肢がさらに広がりました。ただし、CAR-T療法は専門的な管理が必要な特別な治療法です。ご自身がこの治療法の適応となるのか、メリットだけでなく、リスクや治療のプロセスについてもしっかりと理解した上で、担当の先生と十分に話し合って決めていくことが大切です。

      新しい治療法が開発され、選択肢が増えていることは、未来への希望につながります。ご自身にとって最善と思える治療を選び、前向きに進んでいけるよう、私たち看護師も全力でサポートさせていただきます。

      この記事は、医学論文の最新情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

      医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

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