血液がん

【マントル細胞リンパ腫(MCL)と診断された方へ】治療はどう進むの? 看護師と一緒に学ぶ最新ガイドライン(2024年版)

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。マントル細胞リンパ腫(MCL)と診断され、病名を聞いただけでも、これからどうなるのだろうと大きな不安を感じていらっしゃることと思います。ご家族の皆さんも、心配なお気持ちでいらっしゃいますよね。

(今回の解説は、日本の血液内科の先生方が作成された 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版) の マントル細胞リンパ腫 の部分を参考にしています)

出典:日本血液学会 編 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)【編集:日本血液学会】

マントル細胞リンパ腫は、リンパ腫の中でも少し複雑で、治療の進め方も患者さんの年齢や体の状態によって大きく変わってくる病気です。今日は、そんなマントル細胞リンパ腫について、最新のガイドラインの内容をもとに、どんな病気で、どんなふうに治療を進めていくのか、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。皆さんの疑問や不安を少しでも和らげるお手伝いができれば嬉しいです。

日本では悪性リンパ腫全体の約3%と、比較的まれなタイプです。60代半ばの男性に多い傾向があります。診断されるときには、病気がリンパ節だけでなく、骨髄やお腹の中(脾臓や消化管など)にも広がっている(進行期)ことが多いのが特徴です。

診断のためには、リンパ腫細胞の顔つきを詳しく調べる検査(免疫染色といって、CD5やサイクリンD1、SOX11という目印があるかを見ます)や、特徴的な遺伝子の異常(t(11;14)という染色体の異常)があるかを調べることがとても重要になります。 性質: 多くの場合、病気の進行は比較的早い(アグレッシブに近い)と考えられていますが、中には非常にゆっくり進行するおとなしいタイプの方もいらっしゃいます。

患者さんの状態や病気の勢いを予測するための指標(MIPIなど)もありますが、実際の治療方針は、主に患者さんの年齢や全身の状態(元気さ)を一番に考えて決めていきます。

マントル細胞リンパ腫の治療を考える上で、とても大切なポイントがあります。それは、患者さんの年齢や全身の元気さ(持病の有無なども含めて)によって、推奨される治療の強さや戦略が大きく異なる、ということです。

大きく分けて、比較的お若くて体力があり、強い治療にも耐えられると考えられる方(目安として65歳以下の方)と、ご高齢の方や持病などがあって強い治療が難しいと考えられる方とで、治療の目標や内容が変わってきます。

比較的お若くて体力のある方の場合、目標は、まずリンパ腫を完全になくすこと(完全寛解)、そしてその状態をできるだけ長く維持すること、可能であれば治癒を目指すことです。

そのために、次のような段階的な強い治療を行うことが勧められています。

  1. 導入療法: まず、リツキシマブというお薬(がん細胞のCD20を狙う分子標的薬です)と、大量のシタラビン(AraCとも呼ばれます)という抗がん剤を含む、強力な化学療法を行います。いくつかの組み合わせがありますが、R-CHOP療法とR-DHAP療法を交互に行う方法などが代表的です。
  2. 地固め療法(自家移植): 導入療法でリンパ腫がしっかり小さくなったら、さらに再発の可能性を減らすために、ご自身の血液細胞(造血幹細胞)を使った強力な治療、自家造血幹細胞移植(じかぞうけつかんさいぼういしょく、自家移植とも言います)を行うことが勧められています。これは、大量の抗がん剤や放射線でリンパ腫細胞を徹底的に叩いた後、事前に採取しておいた自分の細胞を体に戻して血液を作る力を回復させる治療法です。
  3. 維持療法: 自家移植が無事に終わった後、さらに再発を防ぐ目的で、リツキシマブを定期的(例えば2ヶ月ごと)に点滴する治療(維持療法)を行うことが勧められています。研究では、これによってより長く元気に過ごせる可能性が示されています。(CQ5)

これはかなり体力が必要な治療の組み合わせですが、長期的な効果を目指すための標準的な考え方とされています。

ご高齢の方や、心臓や腎臓などに持病があって自家移植のような強い治療が難しいと考えられる方の場合、治療の目標は、体への負担をできるだけ少なくしながら、病気の進行を抑え、症状を和らげ、生活の質を保つことになります。

この場合に推奨される治療法にも、いくつか選択肢があります。

  • R-CHOP療法 + リツキシマブ維持療法: まずR-CHOP療法という化学療法を行い、効果があった場合にリツキシマブの維持療法を続ける方法です。(CQ5)
  • BR療法: ベンダムスチンという抗がん剤とリツキシマブを組み合わせる治療法です。
  • VR-CAP療法: ボルテゾミブというお薬(プロテアソーム阻害薬)とリツキシマブ、他の抗がん剤を組み合わせる治療法です。
  • I+BR療法: BR療法に、イブルチニブという飲み薬(BTK阻害薬)を上乗せする治療法です。

どの治療法が良いかは、それぞれの効果や副作用の特徴(例えば、ボルテゾミブは手足のしびれが出やすい、など)、患者さんの体の状態や生活スタイル、希望などを考慮して、先生と一緒にじっくり相談して決めていきます。

非常にまれではありますが、診断された時点でリンパ腫の量が非常に少なかったり、進行が極めてゆっくりだったりして、症状も全くない場合は、すぐに治療を開始せずに注意深く様子を見る 経過観察 を選択することもあります。ただ、ほとんどのマントル細胞リンパ腫は進行が早いため、この選択ができる方はごく一部に限られます。

マントル細胞リンパ腫は、治療が難しい病気の一つで、残念ながら再発してしまうことも少なくありません。でも、再発した場合にも治療の選択肢はありますので、希望を捨てないでくださいね。

どんな治療を選ぶかは、最初の治療で何を使ったか、どれくらい効果が続いていたか、再発した時の体の状態などを考えて決めます。

  • BTK阻害薬: 最近、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害薬という種類の飲み薬が登場し、再発・難治性のMCL治療に大きな進歩をもたらしました。イブルチニブや、イブルチニブが効かなくなった後でも使える可能性があるピルトブルチニブといったお薬があります。
  • その他の薬剤: ベンダムスチンやボルテゾミブといったお薬(単独やリツキシマブとの併用)、GDP療法のような複数の抗がん剤を組み合わせる治療法なども選択肢になります。

標準的な治療法がまだ確立されていない部分も多いので、新しいお薬の臨床試験(治験)に参加することも、選択肢の一つになる場合があります。

薬物療法だけではなかなか効果が得られない場合や、特に予後が厳しいとされる遺伝子異常(TP53変異など)がある場合などには、健康なドナーさんから提供された造血幹細胞を使う 同種造血幹細胞移植(同種移植) が、治癒を目指せる可能性のある治療選択肢として考えられることがあります。

ただし、同種移植は自家移植よりもさらに体への負担が大きく、合併症のリスクも高い治療法なので、適応は慎重に判断されます。

マントル細胞リンパ腫の治療は、比較的強いものが多いため、副作用への注意とケアがとても大切になります。

  • 化学療法・移植: 骨髄抑制といって、白血球・赤血球・血小板が減少しやすくなります。そのため、感染症にかかりやすくなったり(発熱に注意!)、貧血や出血傾向が出たりします。その他、吐き気、口内炎、脱毛、だるさなどもよく見られます。
  • BTK阻害薬: 出血しやすくなる、不整脈などの心臓への影響、下痢、皮疹などが報告されています。他のお薬との飲み合わせにも注意が必要です。
  • ボルテゾミブ: 手足のしびれ(末梢神経障害)が出やすいことが知られています。
  • 中枢神経系(CNS)への再発: まれですが、脳や脊髄にリンパ腫が再発することがあります。特にリスクが高いと考えられる場合には、予防的に背中からお薬を入れる治療(髄注)などを検討することもありますが、確立された予防法はありません。

治療中は、副作用をできるだけ軽くするための予防策や、症状が出た場合の対処法がたくさんあります。私たち看護師も、皆さんの体調変化を注意深く観察し、辛い症状があればすぐに対応しますので、我慢しないで何でも教えてくださいね!

マントル細胞リンパ腫は、診断や治療方針の決定が少し複雑で、治療自体も大変なことが多い病気です。不安な気持ちになるのは当然だと思います。でも、この病気の治療は、この十数年で大きく進歩してきました。特に、患者さんの年齢や状態に合わせた治療戦略が考えられるようになり、リツキシマブやBTK阻害薬のような新しいタイプのお薬も使えるようになりました。

だからこそ、ご自身の病気や治療について、分からないことや不安なこと、そしてご自身の希望を、遠慮なく主治医の先生や私たち看護師に伝えていただくことが、何よりも大切です。納得して、前向きな気持ちで治療に取り組めるように、私たちもチーム一丸となって全力でサポートさせていただきます。一緒に頑張っていきましょうね。

診断を受けて、これからどうなるんだろうと不安でいっぱいだと思います。でも、今は良い治療法がたくさんありますし、私たち医療チームが全力でサポートします。どうか一人で抱え込まず、分からないこと、心配なこと、どんな小さなことでも、主治医の先生や私たち看護師に気軽に話してくださいね。一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう!

この記事は、診療ガイドラインの情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

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