血液がん

【論文解説】80歳以上の多発性骨髄腫に対して 最新治療は本当に良い?関西地区での実際の治療状況と課題|看護師エリ解説

1. はじめに

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです😊
ご高齢で多発性骨髄腫(MM)と診断された皆さん、そしてそのご家族の皆さん、治療について、「体力的に大丈夫だろうか?」「副作用は強く出ないだろうか?」など、多くのご心配を抱えていらっしゃることと思います。本当にお疲れ様です。

今回は、特に80歳以上で初めて多発性骨髄腫(NDMM)と診断された患者さんたちが、実際にどのような治療を受け、どのような経過をたどっているのか、日本の関西地方の多くの病院のデータを集めて分析した研究(関西骨髄腫フォーラム KMF研究)の結果を報告した論文をもとに、皆さんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

出典:Okayama Y, Takakuwa T, Shimura Y, et al. Insights into very elderly multiple myeloma treatment from Kansai Myeloma Forum. Leuk Lymphoma. 2025 Apr 28:1-7.

近年、MMの治療薬は目覚ましく進歩していますが、ご高齢の方にとって、その進歩がどのように影響しているのか、実際のデータを見ていくことはとても大切ですね。

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80歳以上の超高齢で 初めて多発性骨髄腫(NDMM)と診断された患者さんです。 社会全体の 高齢化に伴い、このような患者さんは増えていますね。

MMの治療は この20年ほどで大きく変わりました。

昔(~2010年頃まで): MP療法(メルファラン(製品名:アルケラン︎)+プレドニゾロン)などが中心でした。

少し前(2011~2015年頃): ボルテゾミブ(製品名:ベルケイド︎)+デキサメタゾンのVD療法や、レナリドミド(製品名:レブラミド︎)+デキサメタゾンのRD療法といった 新規薬剤 を使った2剤併用療法が増えました。3剤併用療法も少しずつ使われ始めました。

最近(2016~2020年): VD療法やRD療法がさらに主流になり、ダラツムマブ(製品名:ダラキューロ)なども含めた3剤併用療法もより多く使われるようになってきています。 このように、時代とともに、より新しい、そして一般的にはより強力とされる治療法が導入されてきています。

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MM治療は新規薬剤の登場で大きく進歩し、若い患者さんでは生存期間も延びています。

しかし、80歳以上の超高齢の患者さんについては、

  • 体力的な問題や他の持病(合併症)があるため、若い患者さんと同じように強力な治療を行うのが難しいことが多い。
  • 作用が出やすく、治療を続けるのが大変になる場合がある。
  • 臨床試験に参加できる機会が少なく、実際の治療データ(リアルワールドデータ)が不足している。

といった課題がありました。

新しい薬や治療法が登場したことで、超高齢の患者さんの治療成績も本当に良くなっているのでしょうか?
それとも、副作用で かえって 治療が続けにくくなっているのでしょうか?

この研究は、日本の関西地方の多施設(関西骨髄腫フォーラム KMF)で、実際に80歳以上のNDMM患者さんが受けた治療内容とその結果を、治療開始年代別(~2010年、2011-15年、2016-20年)に比較することで、新規薬剤の導入が 超高齢患者さんの治療経過(次の治療までの期間TTNT、病気が進行しない期間PFS、生存期間OS)や、治療中止の理由にどのような影響を与えたか を明らかにすることを目的としました。

超高齢者のMM治療のリアルな現状と課題を探る、貴重な研究ですね。

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425名の80歳以上のNDMM患者さんのデータを分析した結果、いくつかの興味深い、そして少し考えさせられる結果が示されました。

予想通り、治療開始年代が新しくなるにつれて、MP療法のような従来の化学療法は減り、VD療法やRD療法といった新規薬剤を用いた治療、さらには3剤併用療法を受ける患者さんの割合が増加していました。

より強力とされる新しい治療法が増えているにも関わらず、最初の治療を開始してから、次の治療が必要になるまでの期間(TTNT)の中央値は、時代が進むにつれてむしろ短くなっていました!

  • ~2010年(Group1): 20.2ヶ月
  • 2011-15年(Group2): 10.0ヶ月
  • 2016-20年(Group3): 3.8ヶ月

これは少し驚きの結果かもしれませんね。

病気が進行せずに安定していた期間(PFS)の中央値(全体で約24ヶ月)や、長生きできた期間(OS)の中央値(全体で約44ヶ月)については、治療を受けた年代(グループ1~3)による統計的な差は見られませんでした。つまり、新しい治療法が増えても 必ずしもPFSやOSの改善には繋がっていなかった という可能性が示唆されました。

では、なぜ最初の治療期間(TTNT)が短くなったのでしょうか? その理由を探るために治療中止の原因を分析したところ、病気が悪化したり亡くなったりして治療を中止する割合は、時代による差はあまりありませんでした。

一方で、副作用(AE)が原因で治療を中止せざるを得なくなる割合が、近年(特にGroup3)になるほど有意に増加していたのです!(1年間の累積発生率: Group3 37.7% vs Group1 9.9%)しかも、副作用で中止に至るまでの期間も短くなる傾向がありました。

つまり、より強力な治療(特に3剤併用など)が行われるようになった結果、副作用で治療を続けられなくなり、結果的に最初の治療期間が短くなってしまっている可能性が高いと考えられます。

長生きできる期間(OS)に影響を与えていたのは、治療を受けた年代ではなく、やはり 病気の進行度(ISSステージ)、染色体異常(高リスクかどうか)、そして全身状態(PS) といった、患者さん自身の要因でした。

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この研究は、超高齢のMM患者さんにおける治療と副作用について、非常に重要な点を教えてくれています。

  • 強力な治療=副作用リスク増: 新規薬剤、特に複数の薬剤を組み合わせる治療法(3剤併用など)は、若い患者さんには有効性が高いことが多いですが、80歳以上の超高齢の患者さんにとっては、副作用のリスクも高まり、治療を続けることが難しくなる場合がある  ということです。
  • 治療継続の重要性: MM治療では、効果のある治療をできるだけ長く続けることが予後改善につながると考えられていますが、超高齢の患者さんでは、副作用によって早期に治療が中断されてしまうと せっかくの治療効果も十分に得られない可能性があります。
  • どんな副作用に注意?: この研究では副作用の種類の詳細は分析されていませんが、一般的にMM治療で問題となる血液毒性(貧血、白血球減少、血小板減少)、感染症、倦怠感、消化器症状、末梢神経障害などは、高齢者ではより強く出たり、回復が遅れたりする可能性があります。
  • 個別化の必要性: この結果は、超高齢の患者さんに対しては 単に強力な治療を行うのではなく、患者さん一人ひとりの体力(PS)、持病(合併症)、生活状況、そして治療に対する意向などを十分に考慮し、副作用を最小限に抑えながら安全に治療を継続できるような、「個別化」された治療計画が非常に重要であることを示唆しています。

新しい治療法ならば、なんでも良いというわけでなく、副作用 や 生活面での希望を踏まえて選択していく必要があるという事ですね!

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多発性骨髄腫の治療は、新しいお薬の登場で本当に大きく進歩しました。しかし、今回の日本の80歳以上の患者さんのリアルなデータに基づいた研究は 超高齢の方々の治療においては、単純に新しい薬や強力な治療を使えば良い というわけではない という大切なことを教えてくれましたね。

より強力な治療は 確かに効果も期待できますが、同時に副作用のリスクも高まり、かえって治療を続けられなくなって、結果的に十分な効果が得られない という状況も起こりうるのです。この研究結果は、80歳以上の超高齢の患者さんの治療においては 「いかに副作用を抑え、安全に治療を長く続けていけるか」 という視点が、病気そのものを抑えることと同じくらい、あるいはそれ以上に重要であることを示唆しています。

そのためには、患者さんの体力や状態に合わせて お薬の量を最初から調整(減量) したり、副作用が出た場合に 早めにお薬を休んだり減量したりする判断をしたり、副作用を和らげるためのサポート(支持療法)をしっかり行ったり、といった 患者さん一人ひとりに合わせた、きめ細やかな治療計画とケアが不可欠になります。

もしご自身やご家族が80歳以上でMMの治療を受ける、あるいはこれから受けるという場合には、期待できる効果だけでなく、副作用のリスクや、それをどのように管理していくのか、そして何よりもご自身がどのような治療を望んでいるのか、遠慮なく担当の先生や私たち看護師に伝えてくださいね。

年齢を重ねていても、諦めずに治療に取り組むことは可能です。
皆さんが安心して、そして納得して治療を続けられるよう、私たち医療チームは全力でサポートさせていただきます。一緒に、一番良い方法を見つけていきましょう!

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この記事は、医学論文の情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね。

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