リンパ腫

【論文解説】濾胞性リンパ腫(FL)治療のリアル:再発を繰り返すとどうなる? 最新研究から学ぶ長期経過

1. はじめに

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
濾胞性リンパ腫(FL)と診断され、病気と長く付き合っていく必要があると聞いて、再発のことや将来の見通しについて、ご不安に感じていらっしゃる方も多いと思います。

今回の解説は、アメリカの有名な がんセンターであるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC) が、濾胞性リンパ腫の患者さんたちの長期間の治療経過を詳しく調査した研究論文を参考にしています。

出典:Batlevi CL, Sha F, Alperovich A, et al. Follicular lymphoma in the modern era: survival, treatment outcomes, and identification of high-risk subgroups. Blood Cancer J. 2020 Jul 17;10(7):75.

濾胞性リンパ腫は、リツキシマブ(製品名:リツキサンなど)というお薬が登場してから、治療成績が大きく改善し、多くの方が以前よりもずっと長く元気に過ごせるようになりました。でも、再発を繰り返しやすいという性質は変わっていません。今日は、この研究結果をもとに、治療を繰り返していく中で、経過の見通しがどのように変化していくのか、そして、どんな方が特に注意が必要な「高リスク」と考えられるのか、最新の知見を分かりやすくお伝えしたいと思います。皆さんがご自身の状況を理解し、今後の治療や生活を考える上でのヒントになれば嬉しいです。

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まず、濾胞性リンパ腫(FL)についておさらいです。

  • どんな病気?: B細胞というリンパ球ががん化する病気で、多くの場合、進行が年単位でゆっくりな「低悪性度リンパ腫」に分類されます。
  • 治癒は難しいけど…: 今のところ、完全に治癒させることは難しいとされていますが、治療がよく効きやすく、病状をコントロールしながら長く付き合っていくことができる病気です。
  • リツキシマブの効果: 特に、がん細胞の表面にあるCD20という目印を狙う抗体薬、リツキシマブ(製品名:リツキサンなど)が登場してからは、治療成績が飛躍的に向上しました。
  • 再発を繰り返しやすい: ただ、良い状態になっても、時間が経つとまた病気が出てくる(再発する)ことが多く、生涯で複数回の治療が必要になる方が少なくありません。

この研究は、リツキシマブが使えるようになった時代(1998年~2009年)に濾胞性リンパ腫(グレード1~3A)と診断された、たくさんの患者さん(約1100人!)の、その後の治療経過や生存期間を、平均8年以上という長い期間にわたって詳しく追跡調査したものです。

この研究が特に注目したのは、以下の2点です。

初めての治療、2回目の治療、3回目の治療…と治療を重ねていく中で、その後の生存期間(OS)や、病気が悪くならずにいられる期間(無増悪生存期間:PFS)が、どのように変化していくのかを調べました。

FLでは、診断されてもすぐに治療を始めず、しばらく様子を見ること(経過観察)があります。その間に、病気の勢いを示す指標である FLIPI(フリピ)スコア が悪化した場合、いざ治療を始めた後の経過に影響があるのかどうかを調べました。

この研究で、治療を繰り返すごとに、その後の経過の見通しが少しずつ厳しくなっていく傾向がはっきりと示されました。

  • 初回治療後: 治療を受けた方の半数以上が非常に長く生存できる見込みでした(生存期間の中央値には到達していません)。しかし、病気が再発せずに安定していた期間(PFSの中央値)は、約4.7年でした。
  • 2回目の治療後: 生存期間の中央値は約11.7年、PFSの中央値は約1.5年でした。
  • 3回目の治療後: 生存期間の中央値は約8.8年、PFSの中央値は約1.1年でした。
  • 4回目の治療後: 生存期間の中央値は約5.3年、PFSの中央値は約0.9年(1年未満)でした。
  • 5回目、6回目の治療後: さらに期間は短くなる傾向が見られました。

これは少し厳しいデータに聞こえるかもしれませんが、治療を繰り返すごとにリンパ腫細胞が薬に慣れて効きにくくなったり(薬剤耐性)、治療による体への負担が蓄積したりすることが影響していると考えられます。特に、4回目以降の治療では、効果が持続する期間が1年未満と短くなってしまうことが多いという現実は、再発を繰り返す患者さんに対する、より効果的な新しい治療法の開発がいかに重要であるかを示していますね。

FLでは、症状がなく病気の量が少ない場合、すぐに治療を始めずに「経過観察」をすることがあります。今回の研究では、この経過観察中の変化についても重要な発見がありました。

まず、診断後すぐに治療を始めずに経過観察を選んだとしても、それ自体が全体的な生存期間(OS)を短くするわけではない、ということが再確認されました。これは安心できる点ですね!

FLIPIスコアは、診断時に病気の進行リスクを予測するために使われる指標です(年齢、病期、LDH、ヘモグロビン値、リンパ節領域数から計算します)。この研究では、経過観察をしている間に、このFLIPIスコアが悪化(リスクの段階が上がった)してから治療を開始した患者さんは、スコアが悪化しなかった患者さんと比べて、治療後の生存期間(OS)も、病気が安定していた期間(PFS)も、残念ながら短くなってしまう傾向があることが分かりました。

つまり、経過観察中にFLIPIスコアが悪化するということは、単に病気の量が増えただけでなく、病気の性質が少し悪くなっている可能性があり、その後の治療が効きにくくなるかもしれない、という「要注意サイン」と言えるかもしれない、ということです。

FLは基本的に進行がゆっくりなリンパ腫ですが、まれに、より進行が早く悪性度の高いタイプのリンパ腫(多くは びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCL)に性質が変わってしまうことがあります。これを「形質転換」と呼びます。

この研究では、約15%の患者さんで追跡期間中に形質転換が見られました。特に、最初の治療を受けた後に形質転換した場合は、治療前に形質転換していた場合よりも、その後の経過が厳しい傾向がありました。

そして、経過観察中にFLIPIスコアが悪化した患者さんは、形質転換を起こすリスクも高かった、という関連も見られました。

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この論文は、たくさんの患者さんの過去のデータを集めて分析した研究(後ろ向き観察研究)なので、個々の治療法の副作用について詳しく比較したものではありません。

しかし、治療を繰り返すごとに治療効果の期間が短くなるという結果には、リンパ腫細胞が薬に慣れてしまう(薬剤耐性)だけでなく、繰り返される治療によって体力が落ちたり、副作用が蓄積したりすることも影響している可能性があります。

また、経過観察中にFLIPIスコアが悪化した場合には、単に病気の量が増えただけでなく、形質転換など病気の性質が変わっていないか、場合によっては再度リンパ節の組織を採って調べる(生検)などの確認が必要になることもあるかもしれません。この点は、主治医の先生とよく相談することが大切ですね。

治療中は副作用に注意し、予防策や症状を和らげるケアを行います。体調の変化は我慢せず、早めに教えてくださいね!

今回の米国の大きな がんセンターからの報告は、リツキシマブ(製品名:リツキサンなど)が登場した後の時代の、濾胞性リンパ腫(FL)の長期的な経過について、貴重なデータを示してくれました。

FLは治癒は難しいものの、多くの方が長く病気と付き合っていける時代になりました。しかし、再発を繰り返しやすく、治療の回数を重ねるごとに、残念ながら治療効果が持続する期間は短くなっていく傾向がある、という現実も改めて示されました。特に4回目以降の治療の難しさは、新しい治療法の開発への期待を大きくさせますね。

一方で、初回治療前の「経過観察」自体は予後に悪影響を与えないものの、その期間中にFLIPIスコアが悪化する場合は、その後の経過が厳しくなる可能性を示す「要注意サイン」かもしれない という新しい視点も示されました。

FLと診断された方は、ご自身の病気のタイプやリスク、そしてFLIPIスコアなどについて、主治医の先生からよく説明を聞き、今後の見通しや治療方針(経過観察をするのか、すぐに治療を始めるのか、どんな治療を選ぶのかなど)について、しっかりと話し合っていくことが何よりも大切です。

長いお付き合いになる病気だからこそ、私たち看護師も、皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、治療や生活のサポートをさせていただきます。心配なこと、分からないことは、いつでも私たちに声をかけてくださいね。

この記事は、医学論文の最新情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

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