1. はじめに
こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
辺縁帯リンパ腫という診断を受け、これからどうなるのだろうと、とても不安な気持ちでいらっしゃると思います。治療を支えるご家族の皆さんも、心配ですよね。日々、本当にお疲れ様です。
(今回の解説は、日本の血液内科の先生方が作成された 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版) の 辺縁帯リンパ腫 の部分を参考にしています)
『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』(2024年版) 【編集:日本血液学会】
2. 辺縁帯リンパ腫(MZL)ってどんな病気?~3つのタイプがあります~
まず、辺縁帯リンパ腫は、血液細胞の中のリンパ球(B細胞)ががん化したもので、多くの場合、進行が比較的ゆっくりな 低悪性度リンパ腫 に分類されます。おとなしいタイプ、と言われることもありますね。
このリンパ腫は、がんができる場所によって、大きく3つのタイプに分けられます。
- 節外性辺縁帯リンパ腫(EMZL): リンパ節以外の臓器、特に粘膜に関連する場所(胃や腸、眼、唾液腺など)にできるタイプです。MALT(マルト)リンパ腫と呼ばれることも多く、これが一番多いタイプです。
- 節性辺縁帯リンパ腫(NMZL): 首や脇の下、足の付け根などにあるリンパ節にできるタイプです。
- 脾辺縁帯リンパ腫(SMZL): お腹の左上にある脾臓(ひぞう)という臓器にできるタイプです。
それぞれのタイプについて、もう少し詳しく見ていきましょうね。
3. タイプ別解説①:節外性辺縁帯リンパ腫(EMZL/MALTリンパ腫)~胃にできることが多いタイプ~
このタイプは、胃にできることが最も多いのが特徴です。
ピロリ菌との関係
胃MALTリンパ腫の場合、胃の中にいるピロリ菌という細菌が原因の一つになっていることがあります。そのため、もしピロリ菌が見つかったら、まずはお薬でピロリ菌をやっつける 除菌療法 を行います。これだけでリンパ腫が消えてしまうこともあるんですよ。(CQ1)
ピロリ菌がいない場合や除菌で治らない場合
ピロリ菌がいない場合や、除菌をしてもリンパ腫が残ってしまう場合には、病気がある場所に放射線をあてる 放射線治療 が効果的です。多くの場合、これでリンパ腫をしっかり抑えることができます。(CQ2, CQ3)
胃以外の場所(眼、唾液腺、肺など)
胃以外にできるMALTリンパ腫もあります。例えば、眼にできるものはクラミジアという細菌が関連していることもあります。胃以外の場合も、病気がその場所に限られていれば、放射線治療が主な選択肢になります。(CQ4)
4. タイプ別解説②:節性辺縁帯リンパ腫(NMZL)~リンパ節にできるタイプ~
このタイプは、リンパ節が腫れてくるのが特徴です。
- 治療の考え方: もし病気が限られた範囲のリンパ節だけにある場合は、EMZLと同じように、その場所に放射線をあてる 放射線治療 が考えられます。(CQ5)
- 他の場所に広がっていないか、しっかり検査することが大切になりますね。
5. タイプ別解説③:脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)~脾臓にできるタイプ~
このタイプは、脾臓が腫れてくるのが特徴です。お腹が張ったり、血球(赤血球、白血球、血小板)が減ったりすることがあります。
C型肝炎ウイルス(HCV)との関係
SMZLの中には、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染が関連していることがあります。もしHCVに感染している場合は、まずウイルスの治療(抗ウイルス療法)を行うことが勧められます。ウイルスの治療だけでリンパ腫も良くなることがあるんです。(CQ9)
HCVがいない場合
HCVに感染していない場合は、症状があれば、リツキシマブというお薬(点滴薬です)を使うか、手術で脾臓を取り除く(脾臓摘出)ことが選択肢になります。どちらが良いかは、体の状態などを考えて先生と相談して決めていきます。(CQ10)
6. 進行した場合や症状がある場合の治療は?~経過観察も選択肢~
どのタイプの辺縁帯リンパ腫でも、病気が体中に広がっている(進行期)場合や、限られた場所でも症状がない場合は、すぐに治療を始めずに注意深く様子を見る 経過観察(Watchful Waiting) を選ぶことが少なくありません。ゆっくり進行するタイプならではの考え方ですね。(CQ6, 7)
もちろん、症状が出てきたり、リンパ腫が大きくなってきたり、臓器の働きに影響が出始めたりした場合には、治療を開始します。その場合は、他のリンパ腫でも使われる リツキシマブのような抗CD20抗体薬 や、いろいろな種類の 化学療法(抗がん剤) を組み合わせたりして治療を行います。具体的な治療内容は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて決めていきます。
7. もし悪性度の高いタイプに変わったら?(形質転換)
辺縁帯リンパ腫は基本的におとなしいタイプですが、まれに病気の性質が変わって、進行の早い悪性度の高いリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など)になることがあります。これを 形質転換 と呼びます。
もし形質転換が起きた場合は、その悪性度の高いリンパ腫に合わせた、より強力な化学療法が必要になります。R-CHOP療法などがよく使われます。(CQ8)
8. 治療の副作用や注意点について
それぞれの治療には、副作用や注意点があります。
- 除菌療法: お腹の調子が悪くなったりすることがあります。
- 放射線治療: だるさや、放射線をあてた場所の皮膚が赤くなったりすることがあります。場所によっては口内炎や吐き気なども。
- 薬物療法(リツキシマブや化学療法): 使うお薬によりますが、感染しやすくなったり(発熱に注意!)、吐き気、だるさ、脱毛、しびれなどが出ることがあります。
- 脾臓摘出: 手術のリスクの他に、脾臓は免疫に関わる臓器なので、手術後は感染症にかかりやすくなることがあります。そのため、予防接種や抗菌薬の内服が必要になることが多いです。
どんな治療でも、副作用が心配ですよね。治療前には必ず詳しい説明がありますし、治療中も私たちがしっかり様子を見させていただきます。辛い症状があれば、それを和らげるお薬やケアがありますので、我慢せずに伝えてくださいね!
9. まとめ(看護師からのメッセージ)
辺縁帯リンパ腫には3つのタイプがあって、それぞれ治療法も少しずつ違うので、少し難しく感じたかもしれませんね。でも、大切なのは、どのタイプであっても、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てていくということです。
多くの場合、病気の進行はゆっくりなので、焦らずに病気と向き合い、治療法をじっくり考える時間があります。それに、ピロリ菌の除菌やウイルスの治療で良くなるタイプもあるんですよ!
診断を受けて、これからどうなるんだろうと不安でいっぱいだと思います。でも、今は良い治療法がたくさんありますし、私たち医療チームが全力でサポートします。どうか一人で抱え込まず、分からないこと、心配なこと、どんな小さなことでも、主治医の先生や私たち看護師に気軽に話してくださいね!
10. 注意事項
この記事は、診療ガイドラインの情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。
医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!







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