1. はじめに
こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです😊
濾胞性リンパ腫(FL)と診断され、治療や経過観察を続けていらっしゃる皆さん、そして日々サポートされているご家族の皆さん、FLは長く付き合っていく病気だからこそ、再発してしまった時の治療法はとても気になりますよね。不安な気持ちを抱えながら、情報を探されている方も多いと思います。
今回は、そんな再発したり治療が効きにくくなった濾胞性リンパ腫(R/R FL)に対する新しい治療薬の一つ、「エプコリタマブ(製品名: エプキンリ)」について、これまでの研究結果を専門家がまとめたレビュー論文を参考に、その効果や安全性、そして治療における位置づけなどを分かりやすく解説したいと思います!
出典:Bonello F, Frascione PM, Faraci D, Vitolo U. An evaluation of epcoritamab as a treatment for relapsed or refractory follicular lymphoma. Expert Opin Biol Ther. 2025 Apr 19:1-10.
以前のブログで、他の二重特異性抗体やCAR-T細胞療法についてお話ししたことがありますが、 エプキンリ︎も同じ免疫療法の一つです。もともと DLBCL 等の難治性大細胞型B細胞リンパ腫 に 用いられていたお薬で、2025年 2月 に 濾胞性リンパ腫(R/R FL)にも 承認がされました!
どんな特徴があるのか、一緒に見ていきましょうね!
2. 濾胞性リンパ腫(FL)と再発後の治療課題
まずは濾胞性リンパ腫(FL)について簡単におさらいです。
どんな病気?
B細胞リンパ腫の一種で、多くは年単位でゆっくり進行する「低悪性度リンパ腫」です。基本的には治癒が難しいとされていますが、治療法の進歩で非常に長く病気と付き合っていける方が増えています。
再発・難治性(R/R)FL とは?
FLは再発を繰り返しやすい性質があります。再発したり、治療が効きにくくなったりした場合(R/R FL)、次の治療法を選ぶ必要があります。
治療の選択肢と課題
これまでは化学療法(抗がん剤)とリツキシマブ(製品名:リツキサン など)を組み合わせる治療が中心でしたが、副作用の問題や、何度も繰り返すうちに効果が薄れるという課題がありました。近年、CAR-T細胞療法や、今回ご紹介する エプキンリ︎ のような「二重特異性抗体」といった、化学療法を使わない新しい免疫療法の選択肢が増えてきています。
3. 注目薬剤:エプコリタマブ (製品名:エプキンリ︎) ~CD20とCD3を繋ぐ皮下注バイスぺ!~
今回の主役、エプコリタマブ(製品名: エプキンリ)について詳しく見ていきましょう。
このお薬は、「二重特異性抗体((BsAbs : バイスペシフィックこうたい)」と呼ばれる新しいタイプの免疫療法薬です。
二つの異なる「腕」を持っていて、片方の腕でリンパ腫細胞の表面にある「CD20」という目印を、もう片方の腕で患者さん自身の免疫細胞(T細胞)の表面にある「CD3」というスイッチを、同時にガシッと掴みます。これにより T細胞をリンパ腫細胞のすぐ近くに連れてきて、「攻撃開始!」と活性化させ、リンパ腫細胞を破壊するように働きます。 特徴としては、、、
- 皮下注射であること: エプキンリ︎ の大きな特徴の一つが、皮下注射で投与できる点です。点滴と比べて投与時間が短く、患者さんの負担が少ない可能性があります。
- CD20 が 標的: CD20は多くのB細胞リンパ腫で発現しており、リツキシマブなどでも標的にされている信頼性の高い目印です。
4. このレビュー論文は何を伝えたいの? ~エプコリタマブの実力と立ち位置~
エプコリタマブ(エプキンリ)は、R/R FLに対する臨床試験(EPCORE NHL-1試験など)で有望な結果を示し、承認されました。
このレビュー論文は、それらの臨床試験データを基に、R/R FLに対するエプコリタマブの 有効性(どれくらい効くのか、効果は長続きするのか) と 安全性(どんな副作用に注意が必要か) について、専門家の視点から最新の情報をまとめたものです。
さらに、同じようにR/R FLに使われる他の新しい治療法、例えばCAR-T細胞療法や、他の二重特異性抗体(モスネツズマブなど)と比較して、エプコリタマブはどのような位置づけになるのか、その特徴や利点、今後の可能性について考察しています。
以前このブログで紹介したモスネツズマブ(製品名:ルンスミオ︎) も同じ二重特異性抗体ですが、エプキンリ︎ とは少し違う特徴もありますね!
5.研究結果/レビューのポイント解説:エプコリタマブの魅力とは?
このレビュー論文で強調されている、エプコリタマブ( 製品名:エプキンリ︎ )のR/R FL治療における魅力的なポイントを見ていきましょう。
ポイント①:高い効果と深い奏効!
臨床試験(EPCORE NHL-1)では、R/R FL患者さんに対して非常に高い効果が示されました。
- 奏効率(ORR)は約82%: 治療を受けた方の8割以上でリンパ腫が縮小するなどの効果が見られました!
- 完全寛解(CR)率は約63%: なんと6割以上の患者さんで、リンパ腫が検査で見えなくなる完全寛解を達成できたのです!
- MRD陰性率も高い: CRを達成した患者さんの約2/3では、さらに感度の高い検査(MRD検査)でもリンパ腫細胞が見つからない「MRD陰性」の状態になっていました。
ポイント②:効果が早く現れ、長続きする!
治療効果が現れるまでの期間の中央値は1.5ヶ月と、比較的早く効果を実感できる可能性があります。 一度得られた効果、特に完全寛解(CR)は長続きする傾向があり、CRを達成した患者さんの 約72% は18ヶ月後もCRの状態を維持していました。
ポイント③:安全性は管理可能!CRSも予測しやすい?
副作用は起こりえますが、全体として管理可能とされています。
サイトカイン放出症候群(CRS) という最も注意が必要な副作用ですが、治療開始時の「ステップアップ投与」(少量から始めて徐々に増やす)や予防的なお薬(ステロイドなど)によって、発生率(約48%)や重症度(多くはグレード1)が抑えられています。発生時期も治療初期に集中しており、予測しやすいとされています。
ポイント④:皮下注射で利便性も◎!
エプキンリ︎ は 皮下注射 なので、点滴と比べて投与時間が短く済みます。将来的には、入院せずに外来で治療を開始・継続できる可能性もあり、患者さんの負担軽減につながることが期待されます。
非常に すばらしく 期待も高まるお薬ですね!
6. 副作用/注意点について
新しい治療法が登場し、選択肢が増えるのは素晴らしいことですが、それぞれの治療法には注意すべき副作用があります。
- CRS(サイトカイン放出症候群): 最も頻度が高く(約半数)、注意が必要です。発熱、倦怠感、頭痛、血圧低下などの症状が出ることがあります。多くは軽度(グレード1)で治療初期に起こりますが、重症化する可能性もゼロではありません。治療開始後の入院観察や、発熱時の迅速な対応(解熱剤、場合によってはトシリズマブ(製品名:アクテムラ︎)やステロイドの使用)が重要です。
- 感染症: 二重特異性抗体は免疫系に作用するため、治療期間中は感染症のリスクが高まります。肺炎や上気道感染などが報告されています。予防的な抗菌薬・抗ウイルス薬の投与や、免疫グロブリン(血液製剤)の補充、そして日頃からの感染予防策(手洗い、うがい、人混みを避けるなど)と、発熱などの体調変化への早期対応が非常に大切です。
- ICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群): CRSと並んで免疫療法で注意が必要な神経系の副作用です。意識の変化、話しにくさ、手の震えなどが見られることがあります。頻度は低い(約6%)ですが、注意深い観察が必要です。
- 血球減少: 好中球減少、貧血、血小板減少なども起こることがあります。定期的な血液検査が必要です。
- 注射部位反応: 皮下注射した場所が赤くなったり、腫れたり、かゆくなったりすることがあります。
これらの副作用は、経験豊富な医療チームが注意深く観察し、適切な予防策と早期対応を行うことで、安全に治療を進めることを目指します。何か気になる症状があれば、どんな小さなことでもすぐに私たち看護師や医師に伝えてくださいね。
7. まとめ(看護師からのメッセージ)
今回のレビュー論文を読んで、再発・難治性の濾胞性リンパ腫(R/R FL)に対する新しい治療薬、エプコリタマブ(製品名: エプキンリ︎)が、非常に高い有効性と管理可能な安全性、そして皮下注射という利便性を兼ね備えた、本当に魅力的な選択肢であることが改めてよく分かりましたね。
特に 完全寛解率が6割を超え、その効果も長続きする可能性が高い というのは、何度も再発を経験されてきた患者さんにとって、大きな希望となるのではないでしょうか。CRSなどの副作用も、適切な対策によってコントロールできるようになってきています。
もちろん、R/R FLの治療には、他にもCAR-T細胞療法や他の二重特異性抗体(モスネツズマブなど)といった選択肢があります。どの治療法が最適かは、病状(再発までの期間、腫瘍量など)、これまでの治療歴、体の状態、そして患者さん自身の希望や生活スタイルなどを総合的に考慮して、担当の先生とよく相談して決めることが大切です。
さらに、エプコリタマブは、他のお薬(例えば レナリドミド と リツキシマブ の R2療法)と組み合わせる治療法や、もっと早い段階(初回治療など)で使う治療法についても、現在臨床試験が進められており、そちらも非常に有望な結果が出始めています。今後の展開にもますます期待が高まりますね!
大切なのは、諦めずに、ご自身の状況を正しく理解し、主治医の先生と密にコミュニケーションを取りながら、その時々で最善と考えられる治療法を一緒に見つけていくことです。私たち看護師も、最新の情報を提供したり、副作用のケアをしたり、そして何よりも皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、治療の道のりを一緒に歩んでいきたいと思っています。どんなことでも、気軽に声をかけてくださいね。
8. 注意事項
この記事は、医学論文の最新情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。
医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!





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