血液がん

【論文解説】DLBCL初回治療の選択肢!Pola-R-CHP療法の効果とR-CHOP療法とを比較した POLARIX試験 を 看護師エリが解説!

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断され、これから治療を始める方、あるいは現在治療を頑張っていらっしゃる方、そしてそれを支えるご家族の皆さん、病気や治療に対する不安、本当によく分かります。毎日お疲れ様です。

今回は、そんなDLBCLの初めての治療(初回治療)について、新しいお薬「ポラツズマブ ベドチン」を加えた治療法(Pola-R-CHP療法)が、これまでの標準的な治療法(R-CHOP療法)と比べてどうなのか、その効果と安全性を詳しく比較した、POLARIX(ポラリクス)試験という大規模な国際共同研究の論文 から ご紹介したいと思います。

出典: Hervé Tilly,, et al.Polatuzumab Vedotin in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma. N Engl J Med 2022;386:351-363.

DLBCLの治療は、R-CHOP療法が基本でしたが、最近では ポラツズマブ ペドチン の使用機会が 多くなってきています。元々、再発・難治性の DLBCL に対しての効果をみた報告(ROMULUS試験) があり、国内でも使用されていましたが、今回は 初めて DLBCL の治療に取り組まれる方に対する効果をみた 臨床試験の報告をお届けしますね。

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まず、DLBCLと治療について簡単におさらいしましょう。

リンパ腫の中でも最も多いタイプで、進行が比較的早い「中・高悪性度」のリンパ腫です。しっかりとした治療が必要になりますが、治癒を目指せる病気でもあります。

長い間、DLBCLの初回治療の基本は、R-CHOP(アールチョップ)療法でしたね。これは、抗CD20抗体薬のリツキシマブ(製品名: リツキサン など)と、CHOPという4種類の抗がん剤(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)を組み合わせた治療法です。この治療で多くの方が治癒するようになりましたが、残念ながら約4割の方は再発したり、治療が効きにくかったりするという課題がありました。

そこで登場したのが、ポラツズマブ ベドチン(製品名: ポライビー)という新しいタイプのお薬です。これは「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれ、リンパ腫細胞の表面にある「CD79b」という目印にくっつく抗体に、細胞を攻撃する強力な”毒薬”(モノメチルアウリスタチンE)をくっつけたものです。まるで、がん細胞だけを狙って毒薬を直接送り届ける精密なミサイルのようなお薬ですね! このCD79bは、ほとんどのB細胞リンパ腫の細胞に存在しています。

今回の試験でR-CHOP療法と比較されたのが、このPola-R-CHP療法です。これは、R-CHOP療法の中のビンクリスチンというお薬(これは神経の副作用が出やすいお薬でした)の代わりに、新しい ポラツズマブ ベドチン(ポライビー) を組み込んだ治療法です(R-CHP + ポラツズマブ)。より効果を高めつつ、ビンクリスチンによる神経障害を避けられる可能性が期待されました。

R-CHOP療法はDLBCL治療の基本ですが、より多くの患者さんが治癒を目指せるように、さらに効果を高める方法が模索されてきました。様々な試みがありましたが、なかなかR-CHOP療法を明確に上回る治療法は出てきませんでした。

そこで、新しい作用を持つポラツズマブ ベドチン(製品名:ポライビー)を初回治療に組み込むことで、R-CHOP療法の成績を超えることができるのではないか?と考えられました。

POLARIX(ポラリクス)試験は、まさにこの点を検証するために行われた、世界中の多くの患者さん(879人)が参加した大規模な臨床試験(第Ⅲ相ランダム化比較試験)です。

試験の目的

初めて治療を受ける中リスクまたは高リスク(病状が進んでいる、あるいは再発しやすい因子を持っている)のDLBCL患者さんに対して、Pola-R-CHP療法R-CHOP療法 の効果と安全性を直接比較することで、Pola-R-CHP療法が、R-CHOP療法よりも病気が再発・進行するのを抑える効果(PFS)が高いことを証明し、DLBCL初回治療の新しい標準治療となることを目指しました。

約2年半(中央値28.2ヶ月)の追跡期間の結果、Pola-R-CHP療法はR-CHOP療法と比べて、有望な結果を示しました!

Pola-R-CHP療法を受けたグループは、R-CHOP療法を受けたグループよりも、病気が進行したり、再発したり、あるいは亡くなったりするリスクが27%低かったのです(ハザード比 0.73)。これは統計的にも意味のある差(P=0.02)でした! 治療開始から2年後に病気が進行していなかった方の割合は、Pola-R-CHP群:76.7% に対して R-CHOP群:70.2% と、Pola-R-CHP群の方が約6.5%高くなりました。ポラツズマブ ベドチン(ポライビー)を加えることで、再発をより抑えられる可能性が示されたんですね。

一方で、長生きできる期間(全生存期間 OS)については、今回の追跡期間(約2年半)の時点では、両グループ間で統計的に意味のある差は見られませんでした(2年OS率:Pola-R-CHP群 88.7% vs R-CHOP群 88.6%)。 これは、追跡期間がまだ比較的短いことや、もし再発した場合でも、その後の治療(救援化学療法やCAR-T療法など)が進歩しているため、最終的な生存期間には差が出にくいのかもしれません。今後のより長期的な追跡結果が待たれます。(※2024年の 中外製薬のプレスリリース では、5年経過時点の解析で、生存率に有意差はついていませんでした。)

治療終了時点でリンパ腫が完全に見えなくなった割合(完全寛解 CR率)自体には、両グループで大きな差はありませんでした(Pola-R-CHP群 78.0% vs R-CHOP群 74.0%)。 しかし、一度CRになった後、その良い状態がどれだけ続くか(無病生存期間 DFS)を見ると、Pola-R-CHP群の方が再発リスクが低い傾向(30%リスク減)が見られました。つまり、Pola-R-CHP療法の方が、より長持ちする寛解が得られる可能性があるということです。

詳しく見ていくと、Pola-R-CHP療法の良い効果は、特に60歳以上の患者さんや、DLBCLの中でも活性化B細胞様(ABC)タイプと呼ばれる、やや予後が良くないとされるタイプの患者さんでより顕著に見られる傾向がありました。

ただ、この試験はサブグループでの効果の違いを明確にするためのものではないので、参考情報として捉えるのが良いでしょう。

治療を最後まで(8サイクル)やり遂げられた患者さんの割合や、副作用のために治療を中止した方の割合は、両グループであまり差はありませんでした。 また、再発後に次の治療(放射線治療や自家移植、CAR-T療法など)に進んだ方の割合も、Pola-R-CHP群の方がやや少ない傾向でしたが、大きな差ではありませんでした。

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新しいお薬が入ると副作用が心配になりますが、今回の試験では、Pola-R-CHP療法とR-CHOP療法の 全体的な安全性プロファイル(副作用の種類や頻度)は、非常に似ていました。Pola-R-CHP療法で特に新しい、予期せぬ副作用が増えるということはなかったようです。

  • 主な副作用: どちらの治療法でも、最も多く見られた重い副作用(グレード3以上)は、好中球減少(白血球の一種が減ること)、発熱性好中球減少症(好中球が減って熱が出ること)、貧血でした。
  • Pola-R-CHPでやや多かった副作用: 発熱性好中球減少症の頻度は、Pola-R-CHP群の方がR-CHOP群よりもやや高い傾向(13.8% vs 8.0%)がありましたが、重い感染症全体の頻度や、感染症による治療中止・減量の割合には大きな差はありませんでした。
  • 末梢神経障害(しびれなど): ポラツズマブ ベドチン(製品名:ポライビー®)にも神経障害のリスクがありますが、R-CHOPに含まれるビンクリスチンの代わりに使うことで、末梢神経障害の頻度や重症度は、両グループでほとんど差がありませんでした。むしろ、神経障害のために治療を減量した方の割合は、Pola-R-CHP群の方がR-CHOP群よりも少なかったくらいです。これは嬉しい結果ですね。
  • 治療中止・死亡: 副作用が原因で治療薬のいずれかを中止した方の割合や、残念ながら副作用で亡くなられた方の割合も、両グループで大きな差はありませんでした。

全体として、Pola-R-CHP療法は、R-CHOP療法と同程度の安全性で実施できる治療法であると考えられます。

治療を受ける際には、担当の先生や私たち看護師から、予想される副作用とその対策についてしっかり説明がありますので、ご安心くださいね!

今今回のPOLARIX試験は、初めてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療を受ける患者さん(中~高リスク)にとって、とても重要な結果を示してくれましたね。

新しいお薬ポラツズマブ ベドチン(製品名:ポライビー)を組み込んだ Pola-R-CHP療法が、これまでの標準治療であったR-CHOP療法と比べて、病気が進行したり再発したりするリスクを有意に低減させる(PFSを改善する) ことが証明されました!

これは、DLBCLの初回治療における大きな進歩と言えるでしょう。

長生きできる期間(OS)については、現時点では差が見られていませんが、PFSの改善が将来的にOSの改善につながる可能性は十分にありますし、今後の長期的な結果に期待したいですね。また、副作用プロファイルもR-CHOP療法と大きく変わらなかった点も安心材料です。

この結果を受けて、Pola-R-CHP療法は、DLBCLの初回治療における新しい標準治療の選択肢の一つとして、これからますます重要な役割を担っていくと考えられます。(日本でも既に承認され、広く使われ始めています)

もちろん、治療法を選ぶ際には、病気のタイプ(ABC/GCBなど)やリスク、患者さんご自身の年齢や体の状態、そして副作用への考え方などを総合的に考慮する必要があります。一番大切なのは、ご自身の状況に合わせて、主治医の先生とよく相談し、納得のいく治療法を選んでいくことです。この情報が、そのための材料の一つとなれば幸いです。

分からないこと、不安なことがあれば、いつでも私たち看護師にも気軽に声をかけてくださいね。皆さんがより快適に、安心して治療を続けられるよう、サポートさせていただければ嬉しいです!

この記事は、最新の医療論文情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

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