レビュー

【※ネタバレ感想】「AX(アックス)」(伊坂幸太郎)

皆さん、こんにちは!映画と読書が生きがい、日々ナースとしてバタバタ奮闘中のエリです♪

今回ご紹介するのは、伊坂幸太郎さんの『AX(アックス)』。もう、読後すぐに「え、殺し屋モノでこんなに泣かされることある!?」って叫びたくなりました。殺し屋モノっていうと、スリルと血と煙が立ち込めるイメージだけど、この作品は全然違います。やわらかくて、切なくて、どこかあったかい。ページをめくる手が止まらなくなって、気づいたら深夜でした。

《総評》

「AX(アックス)」(伊坂幸太郎 著) 評価:94点/100点

タイトルからしてすでに重厚感あるけど、まさかここまで心に刺さるとは思いませんでした。殺し屋モノというジャンルに構えずに読んでみてください。むしろ、家族小説として読んだほうが、エモさが倍増します。ページをめくる手が止まらなくて、一気読みして、読後は深夜にぼーっと天井を見つめました(笑)。あとがきまで読んでから、また最初のページを開きたくなる。そんな一冊です。


《感想》※ネタバレあり

物語の主人公は、“兜”というコードネームを持つ殺し屋。でもこの人、裏社会の人間とは思えないくらい常識的で、感情豊かで、そして優しい。文房具メーカーの営業マンとしての顔も持ちながら、家では超がつくほどの恐妻家で、息子のこととなると一気に父親モードになる…このギャップが本当に愛おしいんです。

物語は三つの中編に分かれていて、それぞれの話に兜の“仕事”と“家庭”の二面性が絡み合ってきます。仕事ではプロの殺し屋として冷静にターゲットを始末しなければならない。でも、家では特売チラシをチェックして「今日は豚ロースが安い」とつぶやき、妻に小言を言われながら頭を下げる。もう、伊坂さん…これが“生きてる人間”の描き方ってやつなんですね…!

第一話「グラスホッパー」や「マリアビートル」などの殺し屋シリーズを彷彿とさせるようなスリルとテンポ感は健在。でも『AX』は、そこに“家族”という揺るぎない軸が加わっているんです。特に、兜が「息子のために引退を考えている」というくだりでは、ただの殺し屋が一気に“父親”という役割を持つひとりの男として見えてきて、グッと感情移入してしまいました。

息子の未来のために、命がけの仕事から足を洗いたいと思う兜。その裏には、「自分のような道を、息子に歩ませたくない」という切実な願いがあるんですよね。殺し屋という非日常の仕事をしている彼が、普通の父親以上に“家庭”を大切にしている姿が、本当に胸に沁みます。

そして、特筆すべきは奥さんの存在。読んでると最初は「え、めっちゃ怖い奥さんやん!」と思うんだけど、読み進めるにつれて見えてくるのが、彼女の“静かな愛”。決してベタベタと愛情を示すわけじゃない。むしろ、全然口に出さない。でも、兜のことをちゃんと見ていて、ちゃんと理解している。そのことが、ラストエピソードで爆発するんです。

もう、あのラスト…ネタバレになる(と言いつつも衝撃を味わってほしい)ので詳しくは言えませんが、ラストの章での奥さんの行動と台詞に、私は完全に涙腺が崩壊しました。読みながら「こんなのズルいよ…」ってつぶやいて、ティッシュ何枚も使いました(笑)。

さらに、兜が日々の生活で見せる“普通の人間”としての姿も見逃せません。例えば、図書館で本を借りたり、息子と一緒にお弁当を作ったり、日常の一つ一つがあたたかく描かれていて、それが逆に彼の「仕事」との対比を際立たせてるんですよね。殺し屋という職業に生きる男が、こんなにも人間らしいって…そのギャップにやられました。

伏線の張り方もさすが伊坂作品で、序盤でなんとなく触れたエピソードが後半できっちり回収されて「そう来たか〜!」ってうなる瞬間が何度もありました。ミステリーとしても、ハードボイルドとしても、そしてヒューマンドラマとしても文句なし。

殺し屋という異常な職業と、家族を大切にする普通の父親。この二つの顔を持つ兜の人生に寄り添いながら、最後には“生きることの意味”すら考えさせられるような作品です。

伊坂幸太郎さん、やっぱりただ者じゃないです。

それでは皆さん、次回のレビューでまたお会いしましょう。エリでした!

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