血液がん

【急性骨髄性白血病(AML)と診断された方へ】治療はどう進むの? 看護師と一緒に学ぶ最新ガイドライン(2024年版)

こんにちは!血液内科で働く看護師をしているエリです。
急性骨髄性白血病(AML)と診断され、突然のことに大きな衝撃を受け、これからどうなるのだろうと、とても不安な気持ちでいらっしゃることと思います。AMLは進行が早い病気のため、すぐに治療を始める必要があり、心の準備もままならないまま治療が始まることも少なくありませんよね。ご家族の皆さんも、大変な心配と戸惑いの中にいらっしゃることでしょう。

今回の解説は、日本の血液内科の先生方が集まって作成された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』(2024年版)の「急性骨髄性白血病」の部分を参考にしています。

『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』(2024年版) 【編集:日本血液学会】

今日は、このAMLという病気について、たくさんの種類があること、そしてその種類や患者さん自身の状態によって治療法が大きく変わってくること、近年新しいお薬も登場して治療が進歩していることなどを、最新のガイドラインをもとに、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。病気や治療への理解を深め、少しでも安心して治療に臨んでいただけるよう、心を込めてお話ししますね!

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まず、AMLは、私たちの体の血液工場である骨髄の中で、白血球などになるはずの未熟な血液細胞(骨髄系の芽球、白血病細胞とも言います)が、がん化して異常に増えてしまう病気です。

なぜAMLになるのか、はっきりとした原因はまだ完全には分かっていませんが、細胞の設計図である染色体や遺伝子に様々な異常が起こることが、病気の発症に関わっていると考えられています。

がん化した細胞が骨髄を埋め尽くしてしまうため、正常な血液(酸素を運ぶ赤血球、細菌と戦う白血球、血を止める血小板)が十分に作られなくなってしまいます。そのため、貧血(だるさ、息切れ)、感染症(発熱)、出血しやすい(あざ、鼻血など)といった症状が現れます。

AMLは急性という名前の通り、病気の進行が非常に早いのが特徴です。診断されたら、できるだけ早く治療を始める必要があります。

AMLと診断されたら、まず最初に行うとても大切なことが 患者さん一人ひとりのAMLがどのタイプなのかを詳しく調べることです。骨髄検査で採取した白血病細胞を使って、染色体の形や数、そして特定の遺伝子に異常がないかを調べます。

治療法選択の基盤: このリスク分類が、その後の治療法、特に移植治療を行うかどうかを決める上で、非常に重要な判断材料になります。ですから、診断時にはこれらの詳しい検査が不可欠なのです。特にFLT3遺伝子の変異は、使えるお薬にも関わるので重要です。

なぜタイプ分けが必要?: AMLは、原因となっている遺伝子の異常などによって、たくさんの種類(病型)に分けられます。そして、そのタイプによって、治療の効きやすさや再発のしやすさ(つまり、予後)が大きく異なることが分かっています。

ELNリスク分類(2022年版): 最新の国際的な分類基準(ELN分類 2022年版)では、染色体検査と遺伝子検査(FLT3、NPM1、CEBPA、TP53、ASXL1など、たくさんの遺伝子を調べます)の結果を組み合わせて、AMLを大きく3つのリスクグループに分けます。

  • 予後良好群: 比較的治療が効きやすく、治癒が期待しやすいタイプ。
  • 予後中間群: 上記と下記の中間のタイプ。
  • 予後不良群: 治療が効きにくかったり、再発しやすかったりするリスクが高いタイプ。

AMLの治療は、大きく2つのステップで進められます。

まず、強力な化学療法(抗がん剤治療)を行って、骨髄の中にいる白血病細胞を可能な限り減らし、正常な血液を作る力を回復させることを目指します。この状態を 完全寛解(CR) と呼びます。

完全寛解になっても、体の中にはまだ目に見えない白血病細胞が残っている可能性が高いです。これらをさらに叩いて、再発を防ぐために行うのが寛解後療法(地固め療法)です。この内容が、先ほどのリスク分類によって大きく変わってきます。

基本となるのは、アントラサイクリン系という種類の抗がん剤(ダウノルビシンやイダルビシン)と、シタラビン(AraC、キロサイドとも言います)という抗がん剤を組み合わせる治療法です。一般的に 3+7療法 と呼ばれることもあります。これが長年の標準治療です。

もしFLT3遺伝子の中でもITDというタイプの変異が見つかった場合は、予後が厳しいとされるため、初回治療から キザルチニブ(商品名ヴァンフリタ)(※日本では2023年に初回治療への併用が承認されました) というFLT3阻害薬を、上記の化学療法と併用することが勧められます。これにより生存期間が改善することが示されています。このお薬を使うためには、事前に専用の遺伝子検査が必要です。

1回の寛解導入療法で完全寛解に至らない場合もあります。その場合は、基本的には1回目と同じ治療をもう一度行うことが多いです。それで寛解になる方もいらっしゃいます。場合によっては、シタラビン大量療法など、少し違う治療法を試みることもありますが、効果が上がるかは状況によります。

完全寛解になった後の治療は、ELNリスク分類によって決まります。

  • 予後良好群(CBF白血病など): このグループは化学療法が比較的効きやすいため、移植は行わず、シタラビン大量療法(HiDAC) という強力な化学療法を数コース行うことが推奨されます。
  • 予後中間群・不良群: これらのグループは化学療法だけでは再発のリスクが高いため、可能であれば第一寛解期(最初にCRになった段階)で 同種造血幹細胞移植(同種移植) を行うことが強く推奨されます。これが最も治癒の可能性が高い治療法と考えられています。もし適切なドナーさんが見つからないなどの理由で移植が難しい場合は、化学療法(HiDACやアントラサイクリン系を含む多剤併用療法)を継続します。

治療の効果をより詳しく知るために、骨髄や血液中に残っているごくわずかな白血病細胞(MRD)を測定することがあります。これが治療後も陽性の場合は再発リスクが高いと考えられ、移植の必要性を判断する材料になることがあります。日本ではWT1(ダブリューティーワン)というマーカーを測ることが多いです。

これまでAMLでは、急性前骨髄球性白血病(APL)を除き、治療が終わった後に再発予防の維持療法を行うことは一般的ではありませんでした。しかし、最近では、FLT3-ITD陽性で初回治療にキザルチニブを使った場合、その後に3年間のキザルチニブ維持療法を行うことが推奨されるようになりました。また、移植後にFLT3阻害薬を使うことの有効性も示唆されています。海外では経口のアザシチジン(※日本では未承認)が一部のAMLの維持療法として使われており、今後、維持療法の役割は変わってくるかもしれません。

ご高齢の方や、他の病気(合併症)をお持ちで、若い方と同じような強力な化学療法を行うのが難しい場合の治療についてです。体の状態をしっかり評価して、治療の強さを決めることが大切です。

  • さらに治療が難しい場合: 体の状態がさらに厳しい場合には、より負担の少ない治療(低用量AraC単独など)や、症状を和らげることを目的とした緩和的な支持療法(BSC)を選択することも大切な選択肢です。
  • 強力化学療法が可能な場合 (CQ7): 65歳以上でも75歳くらいまでで、体の状態が比較的良く、ELNリスク分類で予後不良群でなければ、若い方と同様に寛解導入療法(AraC+アントラサイクリン)を目指すことがあります。ただし、副作用にはより一層の注意が必要です。
  • 高リスクAML(治療関連・二次性など、60-75歳)の場合 (CQ7, CQ13): 以前に他のがんの治療を受けたことがある(治療関連)場合や、骨髄異形成症候群などから移行した場合(二次性)、あるいはMDS関連の染色体異常があるといった、一般的に予後が厳しいとされる高リスクAMLで、かつ強力治療が可能と判断される60歳から75歳の患者さんには、CPX-351(製品名ビキセオス) というお薬が、従来の化学療法よりも有効である可能性が示され、推奨されています。(※日本では2024年に承認されました) 効果が得られれば、その後に移植を考えることもあります。
  • 強力化学療法が難しい場合 (Unfit) (CQ8): 体力的に強力な化学療法が難しいと判断された場合には、体への負担が少ない治療法を選びます。
  • ベネトクラクス併用療法: 最近の大きな進歩として、ベネトクラクス(製品名ベネクレクスタ)というBCL-2阻害薬を、アザシチジン(商品名ビダーザ)または低用量のシタラビンと組み合わせて使う治療法が、標準治療として推奨されるようになりました。これは飲み薬と注射または点滴の組み合わせで、従来の治療法よりも高い効果と生存期間の延長が示されています。

残念ながらAMLは再発したり、最初の治療が効きにくかったりすることもあります。

  • 非寛解期での移植: 救援化学療法でも寛解に至らない場合の移植は、成績が良くないことが多いですが、状況によっては選択肢となることもあります。患者さんの状態や予後因子を慎重に評価し、よく相談して決める必要があります。
  • 若年者・移植可能: まずは救援化学療法(AraC大量療法を含むものが多いです)で再び完全寛解を目指し、寛解が得られれば同種移植を行うのが最も治癒が期待できる方法です。
  • FLT3変異がある場合: 再発時にもFLT3遺伝子の変異を調べます。もし変異があれば、FLT3阻害薬であるギルテリチニブ(製品名ゾスパタ)やキザルチニブ(※再発・難治例に適応あり)が有効な選択肢となります。これらの薬で効果が得られた後に、同種移植へ繋げることを目指します。
  • 強力化学療法が難しい場合: 低用量AraCや、ゲムツズマブ オゾガマイシン(製品名マイロターグ、CD33陽性の場合)(※日本では再発・難治例への保険適用)、ベネトクラクスとアザシチジンの併用などが選択肢となります。

化学療法を行うと、白血球が非常に少なくなり、感染症にかかりやすくなります。G-CSF(グランなど)は白血球を増やす注射薬です。

  • 効果: AMLの治療中にG-CSFを使うと、白血球が少ない期間(好中球減少期間)を短くする効果は期待できます。
  • 推奨: しかし、重い感染症を減らしたり、生存期間を延ばしたりするという明確な証拠は乏しいため、全ての方に使うことが推奨されているわけではありません。感染症が重症化した場合や、ご高齢の方などでは、使用を検討することがあります。

AMLの治療は強力なものが多く、様々な副作用が出ます。

  • 骨髄抑制: ほぼ全ての化学療法で起こり、感染症、貧血、出血のリスクが高まります。感染予防(手洗い、うがい、マスク、予防的な抗菌薬など)と、発熱時の迅速な対応が非常に重要です。
  • 消化器症状: 吐き気、嘔吐、口内炎、下痢なども起こりやすいです。吐き気止めや痛み止め、うがい薬などで対応します。
  • 脱毛: 多くの化学療法で起こりますが、治療が終わればまた生えてきます。
  • 臓器への影響: 心臓(アントラサイクリン系)、肝臓、腎臓などに負担がかかることがあります。治療前や治療中に定期的に機能をチェックします。
  • シタラビン大量療法: 特有の副作用として、脳や小脳への影響(ふらつき、ろれつが回らないなど)、目の結膜炎(予防の目薬を使います)があります。
  • FLT3阻害薬: 心電図の異常(QT延長)や肝機能障害などに注意が必要です。
  • ベネトクラクス併用療法: 骨髄抑制が強く出ることがあります。また、飲み合わせに注意が必要なお薬が多いです。腫瘍崩壊症候群にも注意が必要です。
  • CPX-351: 骨髄抑制の期間が長引くことがあります。
  • 同種移植: 感染症やGVHD(ドナーの細胞が患者さんの体を攻撃する反応)など、特有の重い合併症が起こるリスクがあります。

治療中は、これらの副作用に細心の注意を払い、予防と早期対応に努めます。栄養管理や精神的なサポートも含め、チームで皆さんを支えますので、心配なことは何でも相談してくださいね。

急性骨髄性白血病(AML)は、進行が早く、厳しい治療が必要になることが多い病気です。でも、この病気の理解は大きく進み、治療法もどんどん進化しています。

染色体や遺伝子の検査によって病気のタイプを細かく分類し、そのリスクに応じて治療の強さを決めたり、移植治療を考えたりする、個別化治療が当たり前になってきました。特にFLT3変異に対する分子標的薬や、高齢者や体力のない方向けのベネトクラクス併用療法、高リスクAMLに対するCPX-351など、新しいお薬が次々と登場し、治療の選択肢が広がっています。

治療は決して楽な道のりではありませんが、治癒を目指せる方もたくさんいらっしゃいます。大切なのは、ご自身の病気の状態や治療方針について、担当の先生と納得いくまで話し合い、信頼関係を築くことです。そして、私たち看護師をはじめ、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、たくさんのスタッフがチームとなって皆さんを支えています。

不安や疑問、辛いこと、どんなことでも私たちに話してください。希望を持って治療に臨めるよう、精一杯サポートさせていただきます。一緒に頑張りましょう!

10. 注意事項

この記事は、診療ガイドラインの情報を分かりやすくお伝えすることを目的としています。
医学的なアドバイスや特定の治療法を推奨するものではありません。治療に関する最終的な判断は、必ず担当の医師とよくご相談の上、決定してくださいね!

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