血液がん

【論文解説】初発多発性骨髄腫(Newly MM)に対するD-VRd療法 vs VRd療法、効果は? CEPHEUS試験を 解説します!

1. はじめに

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
多発性骨髄腫(MM)と診断され、これから治療を始められる皆さん、そしてご家族の皆さん、病気のことを知るだけでも大変なのに、たくさんの治療法の情報があって、戸惑いや不安を感じていらっしゃるかもしれませんね。本当にお疲れ様です。

今回は、初めて多発性骨髄腫の治療を受ける患者さんの中でも、自家移植が難しい、あるいはすぐには移植を行わない方針(移植非適応または移植時期延期)の方々に対する治療法について、最新の臨床試験(CEPHEUS試験)の結果を報告した論文をもとに、皆さんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

出典: Saad Z Usmani, et al. Daratumumab plus bortezomib, lenalidomide and dexamethasone for transplant-ineligible or transplant-deferred newly diagnosed multiple myeloma: the randomized phase 3 CEPHEUS trial. Nat Med. 2025 Feb 5;31(4):1195-1202.

以前のブログでは、移植非適応の患者さんに対するD-Rd療法(ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)の長期的な効果についてお話ししました。今回は この D-Rd療法にボルテゾミブ(製品名:ベルケイド)を加えた形となる 4剤療法 (D-VRd療法)の臨床試験結果を紹介します。

また、過去には 移植非適応 もしくは 年齢以外の理由で 自家移植が難しい方を対象として、メルファランを使用した4剤療法 D-VMP療法のお話「ALCYONE試験」もありましたね。

いろんなお薬や治療法が出てきますが、一緒に学んでいきましょうね。

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今回の試験が対象としたのは、初めて多発性骨髄腫(NDMM)と診断された患者さんのうち、移植非適応(TIE)となる方、一般的に 年齢(一般的に70歳以上など)や他の病気(合併症)のために、自家移植という強力な治療が難しいと判断された方 と 移植時期延期(TD)の方、一般的に 移植は可能かもしれないけれど、すぐには行わずに、まずは薬物療法でしっかりと病気を抑えることを選択された方 が対象となっています。

この研究で比較されたのは、以下の2つの治療法です。

  • VRd(ブイアールディー)療法: これは、これまで標準治療とされている治療法で、「ボルテゾミブ」(製品名: ベルケイド︎)、「レナリドミド」(製品名: レブラミド)、「プレドニゾン」(ステロイド薬)という3つのお薬を組み合わせた治療法で、これまで自家移植が難しい患者さんの標準的な治療法の一つでした。ボルテゾミブはがん細胞の活動に必要な特定の働きを邪魔するお薬です。
  • D-VRd(ディー・ブイアールディー)療法 これは、上記のVRd療法に、新しいタイプの免疫療法薬である「ダラツムマブ」(製品名: ダラザレックス)を加えた4剤併用療法です。ダラツムマブは、骨髄腫細胞の表面にある「CD38」という目印を狙い撃ちするミサイルのような働きをする抗体薬で、体の免疫の力も利用してがん細胞をやっつけます。

このD-VMP療法は、日本でも自家移植が難しい初発の多発性骨髄腫の患者さんに対して承認されている治療法です。

移植非適応または移植時期延期の患者さんにとって、VRd療法やD-Rd療法はすでに有効な治療法として確立されています。では、さらに強力な治療として期待される4剤併用療法のD-VRdは、標準的な3剤併用療法のVRdと比べて、本当に効果を高めることができるのでしょうか? また、お薬を増やすことによる副作用は大丈夫なのでしょうか?

CEPHEUS(セフェウス)試験は、まさにこの疑問に答えるために行われた、国際的な大規模臨床試験(第3相ランダム化比較試験)です。

移植非適応または移植時期延期の初発MM患者さんに対して、D-VRd療法(4剤併用)VRd療法(3剤併用) の効果と安全性を直接比較すること。

治療によって骨髄腫細胞がどれだけ深く抑えられたかを示す 「MRD陰性率」(微小残存病変が検出できない状態になる割合)を主要な評価項目として、D-VRd療法がVRd療法よりも優れているかを検証しました。

この試験でD-VRd療法の優位性が示されれば、移植非適応/時期延期の患者さんに対する 新しい より強力な標準治療 となる可能性がありました。

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約5年(中央値58.7ヶ月)という長期にわたる追跡の結果、D-VRd療法はVRd療法と比べて、多くの点で優れた効果を示すことが分かりました!

これがこの試験の一番の目標でしたが、見事に達成されました!

MRD陰性(10⁻⁵感度:10万個に1個未満まで骨髄腫細胞が減った状態)を達成した患者さんの割合は、D-VRd群:60.9% vs VRd群:39.4% と、D-VRd群の方がVRd群よりも有意に高かったのです!(オッズ比 2.37)

さらに厳しい基準である 10⁻⁶感度(100万個に1個未満)で見ても、D-VRd群の方が高い割合でした(46.2% vs 27.3%)。ダラツムマブ(ダラキューロ)を加えることで、より深く病気を叩けることが示されました。

骨髄腫細胞が検査で見えなくなる「完全寛解(CR)以上」を達成した割合も、D-VRd群:81.2% に対して、VRd群:61.6% と、D-VRd群の方が有意に高かったです!

一度MRD陰性を達成した後、その状態が1年以上続いた患者さんの割合も、D-VRd群:48.7% に対して、VRd群:26.3% と、D-VRd群の方が有意に高かったです。ただ深く効くだけでなく、その効果が長続きする可能性も高いということですね。

病気が進行したり再発したりするまでの期間(PFS)も、D-VRd群の方がVRd群よりも有意に長く、病気が進行するリスクを 43% 低下させました!(ハザード比 0.57, P=0.0005)

PFSの中央値(半数の人が進行するまでの期間)は、VRd群で約4年半(52.6ヶ月)だったのに対し、D-VRd群ではまだ計算できないほど長い(未到達)という結果でした。54ヶ月(4年半)時点でのPFS率は、D-VRd群で68.1%、VRd群で49.5%でした。

生存期間(OS)については、現時点(約5年追跡)では、両グループ間で統計的に明確な差は見られませんでした(ハザード比 0.85)。 ただし、この試験期間が新型コロナウイルスのパンデミックと重なった影響も指摘されています。実際、COVID-19が原因で亡くなった患者さんが両群合わせて24名いらっしゃいました。もしCOVID-19による死亡を除外して解析すると、D-VRd群の方がOSが良い傾向(ハザード比 0.69)が見られたそうです。OSについては、さらに長期の追跡が必要です。

D-VRd療法はVRd療法にダラツムマブ(製品名:ダラキューロ)を上乗せする治療ですが、全体的な安全性プロファイルは、それぞれの薬剤でこれまで知られているものと大きく変わらず、管理可能と判断されました。

  • 好中球減少: D-VRd群(44.2%)の方がVRd群(29.7%)よりも頻度が高い傾向がありました。感染症予防策やG-CSF製剤の使用が重要になります。
  • 血小板減少: D-VRd群(28.4%)の方がVRd群(20.0%)よりもやや高い傾向でした。
  • 感染症: 全体として感染症(特に肺炎)のリスクはD-VRd群の方が高い傾向がありました(Grade3以上 40.1% vs 31.8%)。
  • 末梢神経障害: ボルテゾミブ(製品名:ベルケイド)による手足のしびれや痛みは、どちらのグループも同程度の頻度で見られました(重症例は11%程度)。
  • 治療中止: 副作用が原因で治療を中止した患者さんの割合は、D-VRd群(7.6%)の方がVRd群(15.9%)よりも低いという結果でした。
  • 二次がん: 長期的な心配事の一つである二次がんの発生率は、D-VRd群(7.6%)とVRd群(9.2%)で同程度でした。ダラツムマブの上乗せによるリスク増加は認められませんでした。

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今回の CEPHEUS試験 の約5年間の追跡結果は、移植非適応または移植時期延期の初めて治療を受ける多発性骨髄腫(MM)の患者さんにとって、ダラツムマブ(製品名:ダラキューロ)を加えた4剤併用療法(D-VRd)が、標準的な3剤併用療法(VRd)よりも、より深く(MRD陰性率・CR率向上)、より長く(PFS延長)病気を抑え込むことができる ということを力強く示してくれました。

全生存期間(OS)への明確な効果は、もう少し長期の追跡が必要ですが、MRD陰性という非常に良い状態を達成・維持できる患者さんが増えることは、将来的なOSの改善にも繋がる可能性が高いと考えられます。

安全性についても、感染症や血球減少への注意はより必要になりますが、全体としては管理可能であり、新たな心配事も見つかりませんでした。

この結果は、D-VRd療法が、移植非適応/時期延期のNDMM患者さんに対する新しい標準治療の選択肢として、非常に有望であることを裏付けるものです。D-Rd療法と並んで、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、より強力な治療を選べるようになったと言えますね。

治療は、時に長く、大変な道のりかもしれません。でも、こうして新しい治療法が登場し、より良い状態を目指せるようになってきていることも事実です。皆さんが前向きな気持ちで治療に取り組めるよう、私たちも全力でサポートしていきます。

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この記事は、医学論文の最新情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

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