血液がん

【論文解説】「エルラナタマブ(エルレフィオ)」の 日本人への 効果は?安全?|看護師エリ が 解説!

1. はじめに

こんにちは。血液内科で看護師をしているエリです。
多発性骨髄腫(MM)の治療を受けていらっしゃる皆さん、そしていつもそばで支えていらっしゃるご家族の皆さん、本当にお疲れ様です。新しいお薬の情報など、気になることも多いかと思います。

今回は、再発したり治療が効きにくくなった多発性骨髄腫に対する新しいタイプのお薬、「エルラナタマブ」について、特に私たち日本人患者さんでの効果と安全性をまとめた研究報告 を ご紹介したいと思います。

出典:Shinsuke Iida, et al. Elranatamab in Japanese patients with relapsed/refractory multiple myeloma: results from MagnetisMM-2 and MagnetisMM-3 . Jpn J Clin Oncol. 2024 May 24;54(9):991-1000.

私の働く 病院 でも こちらのお薬を使う方が増えてきました。
以前の記事で、この エルラナタマブ(エルレフィオ) を世界中の方を対象とした試験を紹介しましたね!
その時も高い効果と管理可能な安全性が示されていましたが、「それは海外の人のデータでしょ? 私たち日本人にも同じように効くの? 副作用の出方は違わないの?」と気になる方もいらっしゃるかもしれません。今回は、まさにその点に焦点を当てた報告です

広告

エルラナタマブ(製品名:エルレフィオ)について簡単におさらいしましょう。

(※ 2025年 4月時点では 同じタイプのおくすりとして「テクリスタマブ(製品名: テクベイリ︎)」も登場しています)

このお薬は、「二重特異性抗体(バイスペシフィックこうたい)」と呼ばれる新しいタイプの免疫療法薬です。

片方の腕で骨髄腫細胞の表面にある「BCMA」という目印を、もう片方の腕で患者さん自身の免疫細胞である「T細胞」の表面にある「CD3」という目印を同時に掴みます。そうすることで、T細胞を骨髄腫細胞に引き寄せて活性化させ、骨髄腫細胞を攻撃するように仕向ける、いわば「T細胞の強力な応援団」のような働きをします。

皮下注射で投与します。治療開始時には、サイトカイン放出症候群(CRS)などの副作用を軽減するために、少量から始めて段階的に投与量を増やしていく「ステップアップ投与(SUD)」を行い、その後は基本的に週に1回投与します。24週間以上投与し、奏効が認められている 場合には、2週間に1回の投与に間隔を延ばすことも可能です。

以前、ご紹介したMagnetisMM-3試験(国際共同試験) では、再発・難治性のMM患者さん(BCMA標的治療歴なし)において、約61%の方に治療効果が見られ(ORR)、その効果も長続きする可能性が示されていました。副作用としてはサイトカイン放出症候群(CRS)や血球減少、感染症などが報告されましたが、管理可能とされていました。

お薬の効果や副作用の出方は、人種によって少し違いが見られることがあります。例えば、過去にはサリドマイドやボルテゾミブといったお薬で、日本人を含むアジア人と欧米人で副作用の頻度が異なったという報告もありました。

そこで、この研究では、日本人の再発・難治性多発性骨髄腫の患者さんにおける、エルラナタマブ単独療法の有効性(どれくらい効くか)と安全性(どんな副作用がどれくらい出るか) を確認することを目的としました。

そのために、日本国内で行われた小規模な第1相試験(MagnetisMM-2試験)のデータと、国際共同第2相試験(MagnetisMM-3試験)に参加した日本人患者さんのデータ(合計16人分)を合わせて解析しています。

「私たち日本人にとっても、この新しいお薬は本当に期待できるものなのか?」 その疑問に答えるための重要な報告と言えますね。

結果はどうだったのでしょうか? 日本人の患者さんにおいても、エルラナタマブは有望な結果を示してくれました!

解析対象となった日本人患者さんは合計16名(MM-2試験 4名、MM-3試験 12名)。年齢の中央値は66.5~68.5歳。そして、今回の対象となった患者さんが、これまでに受けた治療回数の中央値は6~7.5回と 多くの治療を経験してきた、治療が難しい状態の患者さんたちでした。全員が主要な3クラスのお薬(プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体薬)に抵抗性(効きにくくなっていた)でした。

エルラナタマブによる治療効果が見られた割合(ORR)は、MagnetisMM-2試験(4名):50.0% (2名が完全寛解 CR)、MagnetisMM-3試験(12名):58.3% (4名が完全寛解以上 sCR/CR) でした。

これは、MagnetisMM-3試験全体の奏効率(61.0%)と比較しても、大きな差はなく、日本人患者さんにおいてもエルラナタマブが高い効果を発揮する可能性を示しています。効果が現れるまでの期間も約1ヶ月と早かったです。効果の持続性については、追跡期間がまだ短いため評価が難しいですが、奏効した方の多くで効果が続いていました。

副作用の出方についても、これまでの海外のデータと比べて、日本人で特別に注意が必要な新しい安全性の問題は見られませんでした

CAR-T療法や二重特異性抗体で注意が必要なCRSですが、発生率は2つの試験で異なりました。

  • MagnetisMM-2(4名):100%(全員)に発生(Grade3が1名)
  • MagnetisMM-3(12名):58.3%に発生(Grade3以上はゼロ)

この違いは、治療開始時のステップアップ投与(SUD)の方法が異なったことが影響していると考えられます。MM-3試験では、より少量から2段階で投与量を上げていく方法(12mg→32mg→76mg)が採用されており、こちらの方がCRSの発生をより抑えられた可能性があります。

日本人の患者さんにとっても、この2段階ステップアップ投与がより安全な方法と言えそうですね。

もう一つ心配される副作用であるICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)は、今回の日本人患者さんのデータでは報告されませんでした

広告

日本人患者さんにおけるエルラナタマブの副作用について、もう少し詳しく見てみましょう。

MM-3試験のデータでは、発生率は約6割でしたが、重症例はありませんでした。2段階ステップアップ投与と適切な管理(解熱剤、ステロイド、トシリズマブ(製品名:アクテムラ)など)で対応可能と考えられます。

やはり感染症は注意が必要です。MM-3試験の日本人では約6割の方に感染症が見られ、重い(Grade3以上)ものも約17%で報告されました。肺炎、サイトメガロウイルス感染などが報告されています。予防内服や免疫グロブリン補充などの感染対策が重要です。

好中球減少(MM-3で83%、うちGrade3以上も同程度)、血小板減少(50%)、貧血(17%)なども高頻度に見られました。定期的な血液検査と、必要に応じたG-CSF製剤(白血球を増やす注射)や輸血でのサポートが必要です。

低ガンマグロブリン血症、発熱、下痢、吐き気、疲労感なども報告されています。

全体として、日本人患者さんにおいても、これまでの海外データと同様の副作用が見られましたが、海外の報告と同様に 管理可能 であると考えられました。もちろん、その前から十分な 副作用 の 予防は行いますので、どんな些細な事でも、つらいことがあれば、どんどん おっしゃってくださいね!

広告

今回の研究報告は、再発・難治性の多発性骨髄腫に対する新しい治療薬 エルラナタマブ(製品名:エルレフィオ)が、私たち日本人患者さんに対しても、海外の患者さんと同様に高い効果が期待でき、安全性も管理可能であることを示してくれた、とても心強い内容でしたね!

特に、治療選択肢が限られてくる中で、新しい作用機序を持つ二重特異性抗体が有効であること、そしてその安全性プロファイルが日本人でも大きく変わらないことが確認されたのは、大きな意義があると思います。副作用、特にCRSや感染症には十分な注意と対策が必要ですが、2段階ステップアップ投与などの工夫によって、より安全に治療を進められる可能性も示されました。

治療法の選択にあたっては、ご自身の病状やこれまでの治療歴、体の状態などを踏まえ、担当の先生とエルラナタマブを含む様々な選択肢について、メリット・デメリットをよく話し合って決めていくことが大切です。

治療の選択肢が増えることは、本当に心強いことです。
ご自身の病状やこれまでの治療歴、体の状態、そして生活スタイルなどを考慮しながら、この エルラナタマブも含めた様々な選択肢について、担当の先生とよく相談し、納得のいく治療を選んでいきましょう。
私たち看護師も、皆さんが安心して治療に臨めるよう、副作用ケアや精神的なサポートなど、精一杯お手伝いさせていただきます!

広告

この記事は、医学論文の最新情報を分かりやすくお伝えするために作成しました。

医学的なアドバイスをするものではありませんし、特定の治療法をお勧めするものでもありません。治療に関する最終的な決定は、必ず担当の医師とよくご相談の上でなさってくださいね!

関連記事

  1. 【論文解説】マントル細胞リンパ腫(MCL)への治療薬 カルケンス vs…

  2. 【論文解説】治療の難しいタイプの AMLに新薬! ビキセオス の効果と…

  3. 【論文解説】再発・難治 濾胞性リンパ腫(FL)治療の最新情報!皮下注射…

  4. 【論文解説】再発・難治マントル細胞リンパ腫に新展開! イブルチニブ+ベ…

  5. 【論文解説】再発・難治の多発性骨髄腫の治療薬「エルラナタマブ(エルレフ…

  6. 【論文解説】ヴァンフリタ と ゾスパタの効果は?FLT3陽性AMLへの…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

みんなの生命保険アドバイザー
PAGE TOP

ナースの推しごとをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む